「キリストは神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分なり、人間と同じ者になられました。」(フィリピ2:6-7)
イエスは言われた。「はっきり言っておく、徴税人や娼婦たちのほうが、あなたたちより先に神の国に入るだろう。(マタイ21:31)

今日のフィリピ書でパウロは驚くべき「神のこの世の深みへの下降」を示す。一方マタイ福音書でイエスは「天への上昇志向」を持つこの世の指導的宗教者達が、「神の恵みとしてのこの世への下降」を全く理解できず、皮肉なことに彼等が差別し、忌み嫌っていた徴税人や娼婦が対照的に受け入れ信じたことを表明した。上昇志向傾向の世の指導者たちには、「世の最下層へ下降し、僕の身分になる神」などは神を冒涜する醜聞に思え受け入れ難かったのであろう。
神の下降志向という神秘な愛と、人間の上昇志向という人智の欲が、猛烈なスピードですれ違っている。この事件の構造を把握することは、イエスと彼に対立した人々、イエスを受け入れた人たちの物語である新約聖書を読み解く鍵になるだろうと思える。(司祭パウロ佐々木道人)